■譲渡所得税とは・・・

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■譲渡所得にかかる税金とは?

所有している土地、建物、株式、貴金属などを売って得た利益のことを、「譲渡所得」という。譲渡所得には所得税や住民税がかかるので、これらを総称して「譲渡所得税」と言うこともあるが、税金の正式な名称はあくまで「所得税」と「住民税」だ。

このうち不動産(土地や借地権、建物や構築物など)の譲渡所得にかかる所得税と住民税は「分離課税」と言って、給与所得や事業所得など他の所得とは切り離して計算される。

この譲渡所得は、単純に「売れた価格」そのものではない。不動産を売るまでには、まずその不動産を買ったときの価格や費用がかかっているし、売るときにも費用がかかる。それらの価格や費用を売れた価格から差し引いたものが譲渡所得だ。

『譲渡所得は以下の計算式で求められる』

譲渡所得=収入金額-取得費-譲渡費用

計算式の中の「収入金額」とは売ったときの金額のこと、「取得費」は買ったときの金額と買ったときの費用の合計、「譲渡費用」は売ったときの費用のことだ。取得費と譲渡費用は具体的には以下のような費用を指す。

【取得費】
・土地・建物の購入代金や建築代金
・購入時の税金(印紙税、登録免許税、不動産取得税など)
・仲介手数料
・測量費、整地費、建物解体費など
・設備費、改良費
・一定の借入金利子

【譲渡費用】
・仲介手数料
・印紙税
・借家人に支払った立退料
・建物解体費など
・売買契約締結後に支払った違約金
・借地権の名義書換料など

なお、建物は期間の経過により価値が減少していくので、用途や構造、経過年数に応じた減価償却費を取得費の合計額から差し引くことになる。

■税額の計算方法、申告手続きは?

譲渡所得にかかる所得税と住民税は、所得に税率を掛けて計算される。税率は以下のように、その不動産を所有していた期間によって異なる。所有期間5年以下が「短期譲渡所得」、5年超が「長期譲渡所得」だ。

【短期譲渡所得】
譲渡所得×39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)
※復興特別所得税の税率は2.1%で、これを所得税に乗じた値となる

【長期譲渡所得】
譲渡所得×20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)

また、長期譲渡所得については所有期間が10年を超えると、譲渡所得のうち6000万円以下の部分について「マイホームの軽減税率の特例」が受けられる。

【所有期間が10年超の場合のマイホームの軽減税率の特例】
・譲渡所得6000万円以下の部分

譲渡所得×14.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%+住民税4%)

・譲渡所得6000万円超の部分
譲渡所得×20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)

具体的に、マンションを3000万円で売ったケースについて、所有期間による税額の違いを計算してみると以下のようになる。

なお、所有期間は売却した年の1月1日時点でカウントされるので注意が必要だ。買ってから5年目の年はまだ「5年以内」なので、その年に売却すると短期譲渡所得になってしまう。

■節税できる特例のポイントは?

譲渡所得にかかる所得税や住民税には、税負担を軽減できる特例がいくつか用意されている。住宅ローン控除と併用できるもの・できないないものがあります。

1. 3000万円特別控除

特例で代表的なのは「3000万円特別控除」だ。これは譲渡所得のうち最高3000万円までは税金がかからないというもの。特例を利用した場合の税額の計算式は以下のようになる。

3000万円特別控除の税額計算式
(譲渡所得-3000万円)×税率=税額

この3000万円特別控除を受けるには、住宅や人に特別な要件はない。ただし、前年または前々年に同じ控除を利用している場合は適用を受けられない。また、次に述べる買換え特例や、譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例とは併用できない。

さらに住宅ローン控除との併用もできないので注意が必要だ。買い替えで家を売却したときに売却益が出て、買い替え先の住宅を買うときに住宅ローンを利用する場合は、3000万円特別控除か住宅ローン控除か、どちらかを選ぶことになる。どちらがより減税効果が大きいか、シミュレーションして比較しよう。

2. 買換え特例

次に紹介するのは「買換え特例」だ。これは、文字通り買い替えるときに利用できる特例だ。元の住宅を売却した価格よりも高い価格の住宅に買い替えた場合、譲渡所得への課税を次回の売却時まで繰り延べられるというもの。例えば3000万円で購入した住宅を4000万円で売却した場合、差額の1000万円が収入金額として課税の対象になるが、売却価格より高い5000万円の住宅に買い替えた場合は譲渡所得に課税されないのだ。

ただし、あくまで課税の繰り延べなので、次にその住宅を売却したときに譲渡所得が出たら、前回繰り延べた分の譲渡所得が加算されて税額が計算される。

この買換え特例を利用するためには、以下の要件をすべて満たす必要がある。ちなみに特例の期限は2019年12月31日の売却までだ。

買換え特例を利用するための要件

(1)自分が住んでいる住宅を売ること。以前に住んでいた家の場合は、住まなくなった日から3年目の12月31日までに売ること
(2)売った年の前年と前々年に3000万円特別控除や10年超所有の場合の軽減税率の特例、買換え特例、譲渡損失の繰越控除を利用していないこと
(3)売却価格が1億円以下であること
(4)居住期間が通算10年以上で、所有期間が10年超であること
(5)買い替え先の住宅の床面積が50m2以上
(6)自宅を売った年の前年から売った年の翌年までの3年間に買い替え先の住宅を取得すること
(7)買い替え先の住宅が耐火建築物の場合は築25年以内、または現行の耐震基準を満たすもの
(8)親子や夫婦など特別な関係がある人に対して売ったものではないこと
(9)売った翌年に確定申告すること

3. 譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例

このほか、売った住宅が買ったときより値下がりしていた場合など、譲渡所得がマイナスになった場合は「譲渡損失」が出たことになる。譲渡損失が出た年は、譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例によりその他の所得と相殺して所得税や住民税を減らす「損益通算」が可能だ。

さらに売った年の所得よりも譲渡損失のほうが大きくて相殺しきれない場合は、翌年以降の所得からも繰り越して差し引ける「繰越控除」が利用できる。この「譲渡損失の繰越控除」は最長3年間使えるので、売った年の損益通算と合わせて最長4年間の所得税や住民税がゼロになるか、軽減される。

この譲渡損失の繰越控除を利用するためには、以下の要件をすべて満たす必要がある。特例の期限は2019年12月31日の売却までだ。

譲渡損失の繰越控除を利用するための要件

(1)自分が住んでいる住宅を売ること。以前に住んでいた家の場合は、住まなくなった日から3年目の12月31日までに売ること
(2)売った年の前年と前々年に3000万円特別控除や10年超所有の場合の軽減税率の特例、買換え特例、譲渡損失の繰越控除を利用していないこと
(3)所有期間が5年超であること
(4)合計所得金額が3000万円以内

〈買い替えの場合〉
(5)売却した住宅の敷地面積が500m2以内(500m2を超える部分の譲渡損失は対象外)
(6)買い替え先の住宅の床面積が50m2以上
(7)自宅を売却した年の前年1月1日から翌年12月31日までに新居を取得し、取得した年の翌年12月31日までに入居、または入居の見込みであること
(8)返済期間10年以上の住宅ローンを借りて新居を取得すること

〈買い替えない(売却のみ)の場合〉
(9)売却の前日に売却住宅に返済期間10年以上の住宅ローン残高があり、売却価格が住宅ローン残高を下回っていること
(10)売った翌年に確定申告すること

なお、買い替えない場合の特例の対象となる譲渡損失は、売却した前日の住宅ローン残高から売却価格を差し引いた額が上限となる。

また、この譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例は住宅ローン控除と併用が可能だ。損益通算や繰越控除で所得がゼロになった年はそもそも所得税も住民税(均等割額を除く)もかからないが、所得が発生した年は所得税や住民税から住宅ローン控除を差し引くことができる。